+ ナイショの二人 + Chamomile Days の rabiさまINDEXイラストから妄想SS ジレジレ期
梅雨の中休みだというのに、今日は朝からさらりとした空気をまとう快晴だった。
本日の堂上班は閲覧室勤務。
だが郁だけは例のごとく、業務部の子供向けイベントに朝から借り出されていて別行動だった。
館内探検と銘打ってこどもたちに図書館に親しんでもらう企画らしい。
だが昼休憩を少し前に、「笠原が貧血で倒れた」という連絡が入り、午前の業務を終わらせてから医務室へ様子を見に行った。
通常の医務室は現在改修中で、現在は別棟の使ってなかった倉庫部屋をに医療用ベッドを運び込んで臨時医務室となっていた。
ちょうど医師が昼休憩を取りに行くところだったらしく、横になってればいいだけだから心配はないけど、様子見ていてあげて、といって早々に部屋を出て行った。
「笠原」
しばらく待ったが返事がないので、仕切りのカーテンに手をかけた。
そして中をのぞいた瞬間、心臓が飛び出るほどの衝撃に襲われた。
「おまっ」
あまりの破壊力に自らの手で自分の口を塞ぐのがやっとだった。
飾り気のない元倉庫だというのに、そこは薄日が差し込んでやわらかなスポットライトに照らされているようだった。
その真ん中で眠る一人の女。
そして、その格好に---------目眩がした。
ロングタンクトップとでもいうのか。細身の体のラインに沿う服一枚で、膝を折り曲げて横向きに眠っていた。
短めの服からは美脚と称されるしなやかな脚が綺麗に曝け出されていた。
その姿だけでも十分な破壊力なのに、郁の手に握られているそれは-------
「...手作りの人形?」
特殊部隊の館内用制服を着た掌大の人形は、特殊部隊の制服を着ていた。あきらかに手作りだと思われる。
それを抱きかかえるような郁の寝姿。
いったい、この状況で俺はどうしたらいいんだ?!
声を掛けるのもためらうような部下の寝姿と謎の人形。気のせいかその人形の表情は....眉尻が上がっていて、普通よりも左右の眉山が近いような....?!
誰に見咎められる訳でもないのに、一人動揺を隠せない。
「ん.....、あ.....、教官?」
人の気配で郁が目を覚ました。
「お前っ、なんて格好してんだっ」
「えっ、あ、その......きゃあっ、す、すみません」
郁はあわたて蹴り出していたらしい、足下に丸まったタオルケットを引き上げて脚を隠す。
堂上は少しホッとしながら視線を少しそらして話しかける。
「....倒れたと聞いたから。大丈夫か?」
「はい、少し休んだので、楽になってきました。このまま昼休憩もらっても....構いませんか?」
午後は勤務に戻りますから。
「ああわかった。それより、なんでそんな格好なんだ?」
「制服がしわになるとまずいと思って...午後は引き続きイベントに行くつもりでしたし」
確かにベッドの柵には郁の制服が投げかけてあった。
「それで、その....人形はどうしたんだ....?」
訊いていいのか一瞬ためらったが、そのまま郁に尋ねた。
「あっ、す、すみませんっ。こ、個人的に利用者から物をもらってはいけないとわかっていたのですが...」
よく訊くと、郁の事を気に入ってくれている親子がいつも読み聞かせありがとう、といって手作りの人形を持ってきたという。
しかも、郁の人形といつも一緒にいる背の低くて難しい顔をしているお兄さんの人形の2つだという。
「もらって良いものか、ほんと迷ったのですが....お気持ちだけで十分です、と一度お断りしたら...じゃあ図書館に寄付します、っておっしゃるんです。
一応、私の顔と教官の顔をしているので....いくらなんでも図書館に飾られたりしたら、恥ずかしすぎる、って思って...」
だから、今回だけね、と親子に他言無用をお願いして、もらったんです、と事情を話してくれた。
「お前、それ俺にバレなかったらどうするつもりでいたんだ?!」
「あ、その....内緒で部屋に持ち帰ろうと思ってました....」
それ、どう考えたって柴崎に見つかるだろう!!
そうすれば当然小牧にも...いつの間にかからかわれることになるのは必須だ。
「やはりダメですか?でも手作りなので、処分とか....」
教官を処分するなんて....とてもそんな気にはなりません....かわいいお人形ですし...
それに....似てますよ?
そう言われて、頬が高潮するのがわかった。
「お、お前の...、笠原人形はどうしたんだ?」
「そこの袋の中に入ったままです」
脱いだ制服が掛けてある場所の陰に袋ごと置いてあった。
中を覗くと薄茶色のショートヘアの人形が可愛く微笑んでいた。
「わかった。今回は手作りだというし、無下にもできないから受け取っておけ、ただし、お前の部屋で二人並べて飾られたら、柴崎のいいからかいネタなるのがオチだから、こちらの人形は俺が預かっておく」
「は、はいっ、え?!」
「それから、その人形、なるべく人目に晒すなよ」
飯、なんか買ってくるから待ってろ。
そう言い捨てて、人形の入った袋をぶっきらぼうに握って堂上は部屋を出て行った。
ん、ええっ?
あたしが堂上教官の人形をもらえたのはうれしいんだけど...
教官、あたしの人形どうするんですか?!
◆◆◆
その後、しばらく訊くに聞けない郁人形の顛末がずっと気になっていたのだが...
優しい上官がこっそり教えてくれた。
「笠原さん人形、堂上の枕元に置いてあったよ」
処分されてなかったのは嬉しいが、それを教えてもらった小牧にどんな言葉を返せばいいのか.......郁は真っ赤になって悩んだ。
fin
(from 20120706)
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