+ 恋しい布団 +  夫婦期

 

 

 

 

 

 

 

天気の良い日は暑さを感じるほどの気持ちよい晴天が拝めたが、秋が日一日深まる度に、朝と夜の寒暖の差が激しくなってくる。


10月の初めには夏掛けの羽毛布団を冬物に変えた。11月になってからは毛布も引っ張り出してきた。
そして11月の半ばには朝方の寒さがじんわりと体で感じるようになってきた。


堂上はいつものように目覚ましに起こされる前に自然と目が覚めた。
時計を見ると郁を起こす時間まで5分ほどだった。
何年経っても自分の腕の中で丸まって眠る妻が愛おしく、眠っているのを承知で柔らかい髪を梳き、唇に軽くキスを落とす。

ギリギリまで寝かせてやろうと思ったが、堂上が動いた気配で郁ももぞもぞと動き出した。
「ん.......」
それでも瞼は閉じたままだ。
そんな子どもっぽい様子も可愛いと思ってしまう自分も郁もいい歳なのにな。

先に起きるか、と自分側の掛け布団だけ捲った。
部屋のひんやりとした空気が堂上の躰に直接あたり、季節の移り変わりを感じた。
「篤さん...おはよう...」
「ん、起きたか、おはよう」
体を起こす前に郁の方をもう一度見た。
ぱちりと目を開けていたので、視線が重なった。

「寒くなったね、部屋の中も」
郁はまだ布団を掛けていたが少し前とは違う温度差を感じたのだろう。

「郁」
そういって堂上は郁の躰に手を伸ばして、軽く手首を掴んだ。
「な、なに?!」
問いには答えず、そのまま腕を引いて郁の躰を自分の方へ引き寄せる。そしてそのまま自分の躰の上に俯せのまま抱き乗せた。

「......郁布団」
起きる前に寒かったから、ちょっとだけ郁布団を掛けたくなった。
「な、なにそれ...って、んんっ...」

躰だけでなく、唇も捉えられた。
「郁布団キス付き。これで俺の今日のご褒美はもらったぞ」
「ご、ご褒美って何?!」
触れ合ったお腹同士はとても温かい。郁は文字通り堂上の腹の上に横たわっているだけだが、二人でこうしてくっついていられる、って幸せなんだなぁと、感じる。

そんな日常の数分。

「いい夫婦の日らしいから、奥さんをちょっとだけ堪能した」
「......じゃ、あたしも旦那様をちょっとだけ堪能する」
そう宣言して郁は自分から堂上の唇にキスを落とした。

すぐに堂上に捉えられて、深いキスが続く。
触れている手がやんわりと郁の躰を撫で上げた---------が、惜しみながらもそこで止まった。

「さ、起きるぞ」
「うん」

お終い、という代わりに吃音のキスをして二人は出勤前の朝モードに戻った。
そんな二人のいい夫婦の日の朝。

 

 

 

 

 

fin

(from 20121122)

 

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