+ 海の護り +
特殊部隊初の女性隊員と言われ続ける郁を娶って数年。
練成教官も努めて着々と女性隊員の土台を築き続けてはいるが、そろそろ愛と命を繋ぐ我が子を欲しいと願って、数か月。ようやくその祈りが通じ、郁の胎内に宿った。
郁と一緒に祝いたいのもあるが、堂上としては郁と宿ったばかりの我が子に『ありがとう』と言いたいのが先に立つ。
口下手を自他ともに認める堂上であるから、無理して言葉にしようとして(これも自他ともに認める)要らんこと言いが出てしまっては、元も子もなくなる。
ここは感謝を表す物に気持ちを込めて郁に贈るのが一番と、ふさわしい何かを探した。
真珠。
安産の守りであり、真珠貝はその胎内で真珠を育んでいく母なる貝。
郁がわが子を育み、無事この手に抱けるように心身を守って欲しいと、願いを込める。
信頼のおける店で込める想いを告げて数点並べてもらい、郁に似合うものを選ぶ。郁に贈る物を選ぶのはいつも楽しみなものだが、今回ばかりは神聖な気持ちを持って選んだ。
*****
堂上がそれを持って帰宅した時、郁はソファでうたた寝をしていた。夕食の支度が済んで一休みのようだ。
「郁、ベッドで寝ないと、体と赤ん坊に悪いぞ」
緩く揺すると、眠りが浅かったのかすんなりと目を覚ます。
夕食と入浴を済ませ、よい眠りを誘えるようにと郁にココアを渡し、リボンのかかった箱を取り出す。ありがとうの言葉を書いた小さなカードを添えて。
そっとリボンを解き箱を開けてうっすらと涙ぐんだ郁を抱きしめて、それを持って背中へ回り郁の首に飾る。仕上げは、それのそばにキス一つ。
「篤さん、ありがとう・・・」
「礼には及ばん。郁と子供が健やかに過ごせるなら」
些かの照れに、堂上の頬が軽く熱を持つ。
柔らかく笑う郁がその頬を撫でて、お返しのキスを落とす。
「ありがとう。今はまだ言えないこの子の分も」
―護りを祈ってくれる大切な人が待ってるからね―
その声を聞いてこの手に抱ける日まで、まだ数カ月。
4月15日の誕生石:真円真珠
http://www.eventpresents.net/img/sankaku.gif4月15日の宝石言葉:「純真無垢」
心をリラックスさせ、創造力を養うパワー、海難の守護能力があり、パールを身に着け愛用していると純粋な心が芽生え、美しさ、健康、長寿が約束されると言われている。また月に支配されることから、妊娠(安産)のお守りとされている。
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